はじめに
透析中の低血圧は、透析室でよくみられるトラブルのひとつです。
ただ、新人のうちは「なぜ起こるのか」「何を見ればいいのか」「下がったときに何から動けばいいのか」がつながって理解しにくく、場面ごとに戸惑いやすいと思います。
このブログではこれまでに、透析低血圧の原因・観察ポイント・予防・起きやすい患者さんの特徴・初期対応について個別に記事を書いてきました。
今回はそれらをまとめて、透析低血圧を全体像として整理します。
透析低血圧とは
透析低血圧とは、透析中に血圧が低下し、気分不快・冷汗・あくび・吐き気・腹痛・足のつりなどを伴うことがある状態です。
透析室では比較的よく遭遇するため、早めに変化に気づいて対応することが大切です。
一方で、血圧が低くても症状なく経過する患者さんもいます。
そのため「何mmHgだから危険」と数値だけで判断するのではなく、普段の血圧帯や症状の有無、その患者さんのいつもの経過とあわせて考える視点が重要です。
透析低血圧の主な原因
透析低血圧は、ひとつの原因だけで起こるというより、複数の要因が重なって起こることが多いです。
主な原因としては、除水量が多いこと・循環血液量の低下・心機能低下・自律神経の反応低下・食後の透析などが挙げられます。
現場で特に意識しやすいのは、除水量と循環血液量のバランスです。
体重増加が大きい日は除水量も増えやすく、体内の水分移動が追いつかないと血圧が下がりやすくなります。
さらに心機能や自律神経の反応、食事の影響などが加わると、より低血圧が起こりやすくなります。
低血圧が起きやすい患者さんの特徴
低血圧は誰にでも起こり得ますが、特に起きやすい患者さんにはある程度の傾向があります。
糖尿病のある患者さん・除水量が多い患者さん・高齢の患者さん・心機能が低下している患者さん・食後に透析を行う患者さん・もともと血圧が低めの患者さんは、特に意識して観察したいところです。
特に糖尿病のある患者さんでは、神経障害や末梢血管障害・低たんぱくなどが重なることで、除水に見合った体内の水分移動が追いつかず、循環血液量が低下しやすいことがあります。
こうした背景を知っておくと、透析前の時点で「今日は注意して見ておこう」という意識を持ちやすくなります。
透析中に観察したいポイント
透析低血圧では、血圧の数値だけを追うのでは不十分です。
血圧・脈拍の変化に加えて、患者さんの症状や訴え・除水の進み具合・表情や反応の変化もあわせて見ていくことが基本になります。
具体的には、気分不快・冷汗・あくび・だるさ・吐き気・足のつりなどの症状に加えて、返答が鈍い・落ち着かない・顔色が悪いといった変化も見逃さないことが大切です。
数値に変化が出る前に、症状や表情のほうが先に変わることがあります。
患者さんの中には症状が出ているのにもかかわらず我慢をしていることもあるので表情の変化や体動などにも気を配る必要があると感じています。
血圧が下がったときの初期対応
透析中に血圧が下がったときは、まず落ち着いて観察し、必要な対応を順番に進めることが大切です。
基本として押さえておきたいのは、血圧と症状の確認・除水量の確認・血流量の確認の3点です。
いきなり処置に飛ぶのではなく、本当に症状を伴う低血圧かを確認し、どの程度除水が進んでいるかを把握したうえで、必要に応じて除水停止や下肢挙上などを行う流れを意識しておくとよいと思います。
予防のために意識したいこと
低血圧は起きてから対応するだけでなく、起こさないようにする視点も大切です。
除水量の適切な設定・ドライウェイトの見直し・食事のタイミングへの注意・患者さんの状態の事前把握、この4点が予防の基本になります。
特に新人のうちは透析が始まってからの観察に意識が向きがちですが、透析前の情報確認がかなり重要です。
その日の体重増加・透析前血圧・食事のタイミング・既往歴・心機能などを先に見ておくことで、低血圧のリスクを予測しやすくなります。
数値だけで判断しないことが大切
低血圧対応で新人が迷いやすいのは、「血圧が低い=すぐ危険」と考えすぎてしまうことと、逆に「まだ数値はそこまで低くないから大丈夫」と見逃してしまうことの両方です。
実際、低血圧の判断は数値だけでは割り切れず、迷う場面も少なくありません。
ですが、同じ90mmHgでも、もともとそのくらいで安定している患者さんと、普段140mmHg前後の人が急に90mmHgになるのとでは意味が違います。
だからこそ、低血圧では「数値」「症状」「患者背景」「除水状況」をまとめて見ることが大切です。
これが透析低血圧を理解するうえでは、この視点がとても重要だと思います。
現場で感じること
実際の現場では、低血圧が起こりやすい患者さんはある程度決まっていると感じることがあります。
除水量が多い患者さん・もともと血圧が低い患者さん・糖尿病がある患者さんでは、特に早めに変化を見ておくことが大切です。
以前、普段150mmHg以上で推移していた患者さんが、定時測定で130mmHgまで下がっていると気づいたら、そこから5分も経たないうちに拡張期血圧が60mmHg台まで急落した経験があります。
絶対値だけ見れば130mmHgはそれほど低くないのですが、その患者さんにとっては「いつもより明らかに低い」状態でした。
低血圧は、下がりはじめると一気に進むことがあります。
「少し下がってきたな」と感じた段階で早めに動くことの大切さを、そのとき改めて感じました。
低血圧は、起きた瞬間の対応だけ覚えればいいわけではありません。
原因を知り・起きやすい患者さんを把握し・観察ポイントを押さえ・必要時に初期対応し・予防につなげる。
この流れで理解しておくと、現場でも落ち着いて動きやすくなると思います。
まとめ
透析低血圧は、新人透析看護師が特に戸惑いやすいテーマのひとつです。
ただ、全体を整理すると大事な流れはシンプルです。
- なぜ起こるかを知る
- 起きやすい患者さんを把握
- 数値だけでなく症状や表情も観察
- 下がったときは落ち着いて初期対応
- 普段から予防の視点を持つ
この流れを頭に入れておくと、低血圧を点ではなく線で理解しやすくなります。
個別の内容は各記事でも詳しくまとめているので、気になる部分からあわせて読んでみてください。















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