はじめに
シャント穿刺を始めたばかりの頃は、うまくいかない経験が続いて落ち込むこともあると思います。
一度失敗すると「自分は穿刺が向いていないのでは」「また失敗したらどうしよう」と不安が強くなりやすいです。
私自身も何度もミスをして刺し直しや交代を繰り返し、穿刺についてかなり悩んだ時期がありました。
ただ、シャント穿刺での失敗にはある程度共通したパターンがあります。ただ何となくうまくいかないのではなく、どこでつまずいているのかを整理することが大切です。
この記事では、シャント穿刺で新人が失敗しやすい原因と、つまずきやすいポイントを整理します。
なぜ新人はシャント穿刺で失敗しやすいのか
シャント穿刺は、単に針を刺す手技ではありません。
血管の走行・深さ・張り・患者さんごとの特徴を見ながら、その場で判断していく必要があります。
新人が難しさを感じやすいのは、手技そのものだけでなく、血管を立体的にイメージすること・刺す前に情報を集めること・逆血後の動きを落ち着いて行うこと・緊張の中で操作することなど、複数の要素が重なるからです。
つまり失敗しやすいのは、単純に技術不足というより、見る力・考える力・経験がまだそろっていない時期だからともいえます。
また、点滴ラインを取る静脈血管とシャント血管では、硬さも太さもまったく別物です。点滴の感覚のまま刺しにいくと、うまくいかないことが多いと感じています。
シャント穿刺で失敗しやすい原因
1.観察と触診が足りない
新人が最もつまずきやすい原因のひとつが、刺す前の情報収集が不十分なことです。
血管の走行・深さ・張りを十分に確認しないまま刺すと、狙いがずれる・血管の深さに合わない角度になる・思った位置に入らない、といったことが起こりやすくなります。
穿刺は刺す瞬間だけで決まるのではなく、刺す前にどれだけ血管を理解できているかが大きく影響します。
また、血管に入ったかどうかの感覚がつかめないこともあります。
特に駆血しても皮膚や血管が柔らかい場合、針を進めても血管がへこんでなかなか穿破できず、穿破できたときには下壁まで貫いてしまう、といった経験があります。
2.血管の深さをうまくイメージできていない
血管の走行は見ていても、深さまで十分に意識できていないことがあります。
その結果、浅すぎて血管に届かない・深すぎて反対側を貫く・一度入っても安定しない、といった失敗につながります。
以前、浅そうだと判断して浅めに刺したところ、血管の上に針を進めていたことがありました。
穿刺は平面的に見るのではなく、皮膚の下にある血管を立体で考えることが大切です。
3.角度や進め方が血管に合っていない
血管の深さや太さに合わない角度で刺すと、うまくとらえにくくなります。
また、逆血が見えたあとにそのまま角度をつけて進めすぎると、血管を傷つけたり貫いたりすることもあります。
そして指導を通じて気づいたことがあります、それは穿刺者の体の向きも穿刺の結果に影響するということです。
穿刺の角度も大切ですが、穿刺者自身の体の向きをできるだけ血管に対し平行にすることでより安定した穿刺につなげられます。
4.針先の感覚がまだつかめていない
シャント穿刺では、針先がどこにあるかを感覚的にとらえることが重要です。
ただ、この感覚は最初から自然に身につくものではありません。
私自身、入った感じがあっても確信が持てないことが多くありました。
逆血が来たのに外筒が進まず、結局血管外留置になったこともあります。
感覚があいまいな時期に大切なのは、わからないことを前提に丁寧に確認することです。
5.緊張で操作が硬くなる
患者さんも見ていて、失敗したくないと思うほど、手や動きが硬くなりやすくなります。
すると、角度が不安定になる・刺入がぎこちなくなる・落ち着いて修正できなくなる、といった影響が出やすくなります。
穿刺の失敗は、知識や手技だけでなく、緊張の影響もかなり大きいと感じています。
6.一度の失敗で焦ってしまう
一度うまくいかないと、頭が真っ白になって次の判断が雑になることがあります。
針先位置がよくわからないまま進める・焦って強引に修正しようとする・再穿刺の判断が遅れる、といった流れです。
失敗を大きくしやすいのは、最初のズレそのものより、うまくいっていないのに無理に続けることです。
7.「とにかく入れればいい」と考えてしまう
新人の頃は、どうしても「入ること」がゴールになりがちです。
しかしシャント穿刺で本当に大事なのは、血管を傷めないこと・安定して脱血・返血できること・患者さんの負担を減らすことです。
よくあるのが、静脈の内膜が切り切れていない状態で留置されてしまうケースです。
静脈の外膜と内膜の間にカテーテルが留置されてしまい、血管内に入ったように見えても、結局脱血できずに刺し直しになった経験が何度もあります。
一瞬入ったように見えても、圧が不安定だったり血管外だったりすれば、良い穿刺とはいえません。
新人がつまずきやすい考え方
手技だけで解決しようとする
穿刺がうまくいかないとき、角度や持ち方ばかり気にしてしまうことがあります。
もちろんそれも大切ですが、それ以前に足りていないのが観察や触診であることも多いです。
失敗を感覚のままで終わらせる
「今日は何となくだめだった」で終わると、次につながりにくくなります。
何が難しかったのか何がダメだったのかを言語化しないと、経験が積み上がりません。
私自身、失敗した後は状況を思い出し、穿刺針を片手に刺す角度などを振り返っていました。
無理をしない判断が遅れる
新人のうちは「ここで代わってもらったらだめだ」と思いやすいですが、無理に続けて血管を傷める方が問題です。
安全のために立ち止まる判断も大切です。
患者さんの中には「刺したからには最後まで責任もって刺せ」という考えの方もいると思うので状況に合わせて対応するといいと思います。
失敗を減らすために大切なこと
刺す前の観察と触診を丁寧にする
やはり一番大事なのはここです。
どこを狙うのか・どのくらいの深さか・どの方向に走っているのかを確認してから刺すだけでも変わります。
毎回振り返りを言葉にする
血管が深かった・張りが弱かった・緊張して進めすぎた・逆血後の動きが雑になった、というように、できるだけ具体的に振り返ると次につながります。
うまくいかなかった原因を分けて考える
失敗したときに「下手だった」で終わらせないことが大切です。
観察の問題か・深さの問題か・角度の問題か・緊張の問題か・判断の問題か、と分けて考えると改善しやすくなります。
まとめ
シャント穿刺で新人が失敗しやすいのは、単純に不器用だからではありません。
観察と触診が足りない・血管の深さをイメージできていない・角度や進め方が合っていない・針先の感覚がまだつかめていない・緊張で操作が硬くなる・焦って無理に続けてしまう・入れることだけが目的になってしまう、といった原因が重なることが多いです。
大切なのは、失敗を「自分は向いていない」で終わらせず、どこでつまずいたのかを整理して次につなげることです。
シャント穿刺は経験が必要な手技ですが、経験はただ回数を重ねるだけでは増えません。
一回ごとの穿刺を振り返りながら、少しずつ見る力と考える力を育てていくことが大切だと思います。
※本記事は一般的な内容をまとめたものであり、実際の対応は施設の方針や医師の指示に従ってください。










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