はじめに
シャント穿刺では、気をつけていても血管外穿刺が起こることがあります。
刺した直後に腫れが出ることもあれば、脱血を開始してから腫脹や痛みで気づくこともあります。
穿刺を始めて間もない頃は「これって血管外?それとも入ってる?」「とりあえず抜くべき?」「どこを観察すればいい?」と迷いやすい場面だと思います。
血管外穿刺が起きたときに大切なのは、慌てずに「今どういう状態か」を正確に見極めることです。
この記事では、初期対応と観察ポイントを新人看護師向けに整理します。
血管外穿刺とは
穿刺針が血管内にうまく入っていない、あるいは一部が血管外にずれてしまい、血液が血管の外へ漏れ出している状態のことです。
サーフローで点滴をつないだときに血管に入っていなかった、という経験と本質は同じです。
シャント血管は表在にあって視認しやすい反面、血管の深さ・走行のくせ・血管壁の硬さ・前回穿刺部の状態によって、見た目どおりにいかないことも少なくありません。
「新人だから起こす失敗」ではなく、誰にでも起こりうるトラブルとして理解しておくことが大切です。
血管外穿刺を疑うサイン
血管外穿刺は穿刺した瞬間だけでなく、透析開始後に気づく場合も多くあります。「いつもと違う」感覚を早めにキャッチできるかがポイントです。
- 穿刺部が膨らむ・腫れる
- 患者さんが強い痛みや違和感を訴える
- 血液ポンプを回すと穿刺部周囲が張ってくる
- 脱血不良・静脈圧急上昇などの機器アラームが鳴る
- 血流が不安定になる・流量が上がらない
- 針の固定に問題はないのに穿刺部周囲に緊張感がある
腕にむくみがあると視診だけでは判断しにくいこともあります。
穿刺後や透析開始直後に腫脹・痛み・圧の異常が出たときは、まず血管外穿刺を疑う意識を持ちましょう。
初期対応の流れ
大事なのは「慌てて動くこと」ではなく、「悪化させないこと」です。
1.血液ポンプを止める、または流量を落とす
そのまま流し続けると血管外への漏れが広がり、腫脹や疼痛が悪化します。
圧力センサーで機器が自動停止することもありますが、自分で気づいたら機械より先に止める意識を持ちましょう。いったんポンプを止め、患者さんの訴えと穿刺部の状態を確認します。
2.穿刺部をすぐに圧迫する
腫れに気づいたら、まず穿刺部を圧迫してください。
これは穿刺直後に腫れが出たときも、脱血中に腫れてきたときも同じです。
圧迫することで、血液が血管外にそれ以上広がるのを抑えることができます。
強く押さえすぎる必要はありませんが、腫れが広がっている間は圧迫を続けながら状態を観察します。
3.穿刺部を観察する
腫れの有無・範囲・痛みの強さ・皮膚色の変化・血液の漏れを確認します。
この時点で明らかな腫脹や疼痛があれば、その針は安全に継続使用できない可能性が高いです。
4.無理にそのまま続けない
「少し腫れているけど流せるかも」と続けると、漏出を広げるリスクがあります。
特に返血側では圧がかかりやすく、腫れの進行が早い傾向があります。
迷ったときはひとりで抱えず、すぐに先輩や担当者に相談しましょう。
可能であればエコーで針先の位置を確認するのが確実です。
5.必要時は抜針して止血・再穿刺を検討する
明らかに血管外穿刺と判断したら、その針の継続使用は中止し、抜針・止血を行います。
別部位での再穿刺が可能か、透析継続ができるかを判断します。
施設のルールやスタッフ体制によって対応が異なるため、自施設の手順に沿って動くことが前提です。
脱血側と返血側で見え方が違う
血管外穿刺は脱血側か返血側かで、見え方や対応の緊急度が変わります。
脱血側で起こった場合
血液がうまく引けない・脱血不良アラームが出る・流量が上がらない・不安定、という形で気づくことが多いです。
針先が少しずれただけでも影響が出やすいのが特徴です。
血管外膜と内膜の間に留置されていても脱血できなくなります。
返血側で起こった場合
腫脹が出やすく進行が早い・痛みが強く出やすい・返血圧の異常が出ることがある、という点に注意が必要です。
血液が押し込まれる方向に圧がかかるため、気づかず流すと腫れが一気に広がることがあります。経験上、あっという間に腫れますので注意が必要です。
少しでも怪しいと感じたら、早めに止めて確認する判断が大切です。
観察のポイント
初期対応のあとは観察が重要な仕事になります。
抜針して終わりではなく、その後の変化を丁寧に追ってください。
- 腫脹の有無と広がり
- 痛みの強さ・変化
- 皮膚色・内出血の有無
- 熱感の有無
- しびれや神経症状
- シャント音・スリルの変化
- 透析継続の可否
- 再穿刺後の血流状態
特に重要なのは「腫れが広がっていないか」「痛みが強くなっていないか」の2点です。
再穿刺を行った場合も、「うまく刺せた」で安心せず、元の穿刺部と再穿刺部の両方を継続して観察してください。
患者さんへの声かけ
血管外穿刺が起きると、患者さんは不安になります。
以前に失敗経験がある方では、次回以降の穿刺への恐怖心が残ることもあります。
落ち着いた態度で、以下の点を説明しましょう。
- 今どういう状態が起きているか
- 安全を確認しながら対応していること
- 必要なら別部位でやり直すこと
- 腫れや痛みは引き続き観察していくこと
技術的な対応と同じくらい、こうした声かけが患者さんの安心感と信頼につながります。
透析看護では、説明や声掛けもかなり大切だと感じています。
血管外穿刺を起こしにくくするために
起きたあとの対応だけでなく、日常の穿刺精度を高めることも大切です。
- 穿刺前に血管走行を視診・触診でしっかり確認する
- 前回穿刺部や内出血の位置を把握する
- 血管の深さ・逃げやすさをイメージしてから刺す
- 無理な角度で穿刺しない
- 固定後も針先がずれていないか確認する
血管外穿刺は「刺した瞬間のミス」だけでなく、穿刺前の確認やイメージ不足から起こることもあります。
だからこそ、穿刺前のひと手間が大きな差になります。
私はその患者さんの血管に合った穿刺の方法を自分なりに覚えておくことが大切だと考えています。
新人看護師が押さえておきたいこと
新人のうちは、血管外穿刺が起きるとかなり焦ると思います。
ただ、大切なのは失敗しないことだけではなく、異常に早く気づいて安全に対応することです。
刺した直後は問題なく見えても、血液ポンプを回しはじめてから腫れや痛みが出て気づくことがあります。
だからこそ、穿刺直後だけでなく開始後の数分も穿刺部の観察をすることが大切だと感じています。
痛み・腫脹・圧の異常・流れの悪さ、こうしたサインを見逃さず「少し様子を見よう」と無理に続けないこと。
自分だけで判断しきれないときは早めに相談すること。
それが患者さんの安全を守ることに直結します。
まとめ
血管外穿刺が起きたときは、まず血液ポンプを止め、腫脹・痛み・圧の異常を確認します。
明らかな血管外穿刺と判断したら抜針・止血・再穿刺を検討し、その後も腫れの広がりやシャントの状態を丁寧に観察してください。
血管外穿刺は誰にでも起こりうるトラブルですが、初期対応と観察を落ち着いて行うことで悪化を防ぎやすくなります。
「異常に早く気づくこと」「無理に続けないこと」、この2点を意識しておくだけで、初期対応の質は変わってきます。










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