透析とは?新人看護師向けに仕組みを簡単に整理|腎不全・除水・ダイアライザの基本

はじめに

透析室に配属されたばかりの頃は、装置・回路・ダイアライザ・除水・血圧低下・シャント・抗凝固薬など、覚えることが一気に増えます。

「透析って、結局何をしているのか」「老廃物を抜くことと水分を抜くことは同じなのか」「看護師は透析中に何を見ているのか」

このあたりが整理できていないと、アラームや患者さんの変化が起きたときに何を優先して見ればよいのか迷いやすくなります。

私自身、最初に透析室に来たときは拡散やろ過については全く理解できず、「筒の中で血液がきれいになっているんだな」くらいの認識しかありませんでした。

仕組みがわからないまま現場に立つと、何かが起きたときに頭が真っ白になりやすいです。

この記事では、新人看護師向けに透析の仕組みをできるだけシンプルに整理します。

細かい原理や数値の話は別記事で扱うとして、まずは「透析は腎臓の代わりに何をしているのか」という視点で見ていきます。

透析とは、腎臓の働きを一部代わりに行う治療

透析とは、腎臓の働きが低下した患者さんに対して、血液を体の外に取り出し、透析器(ダイアライザ)を通して血液中の老廃物や余分な水分などを調整する治療です。

腎臓は本来、体の中で次のような働きをしています。

  • 老廃物を尿として出す
  • 余分な水分を尿として出す
  • 電解質のバランスを整える
  • 体液量や血圧に関わる
  • 酸塩基平衡を調整する

透析では、このうち主に尿毒素の除去・水分の調整・電解質の調整・酸塩基平衡の是正が柱となります。

ただし、透析は腎臓の働きを完全に再現しているわけではありません。腎臓が24時間かけて行っている調整を、透析では限られた時間の中でまとめて行います。

そのため透析中には血圧低下・気分不快・筋けいれん・頭痛・倦怠感など、患者さんの状態に変化が出ることがあります。

一般的には「血液をきれいにする治療」と説明されることが多いですが、実際には老廃物を取り除くだけでなく、余分な水分や電解質、酸塩基平衡の調整も行っていることを理解すると、現場の観察につながりやすくなります。

腎不全になると、体に何が起きるのか

腎不全とは、腎臓の働きが大きく低下し、老廃物・水分・電解質などを十分に調整できなくなった状態です。尿として出すはずのものが体にたまりやすくなります。

たとえば、次のような変化が起こります。

  • 老廃物がたまる
  • 水分がたまる
  • カリウムなどの電解質が乱れる
  • むくみや体重増加が起こる
  • 血圧が上がりやすくなる
  • 息苦しさが出ることがある

透析患者さんでは、尿量が少ない、またはほとんど出ない方もいます。その場合、飲水や食事で体に入った水分は自然には十分に外へ出せません。

そのため透析では老廃物を抜くだけでなく、体にたまった余分な水分を抜くことも重要になります。

ここで大切なのは、老廃物を抜くこと水分を抜くことは別のことだという点です。

この2つの違いは、後のセクションでもう少し詳しく整理します。

透析で行っていることは大きく4つ

透析で行っていることは、新人のうちはまず次の4つで整理するとわかりやすいです。

1.老廃物(尿毒素)を抜く

腎臓が十分に働かないと、本来尿として出るはずの老廃物(尿毒素)が体にたまります。

透析では血液をダイアライザに通すことで、血液中の老廃物を取り除きます。代表的な指標として、尿素窒素やクレアチニンなどがあります。

新人のうちは細かい数値の意味をすべて覚えるより、まず「体にたまった老廃物を透析で抜いている」と理解しておければ十分です。

検査値の見方は別記事で整理します。

2.余分な水分を抜く(除水)

透析では体にたまった余分な水分も抜きます。

これを除水といいます。透析と透析の間に体重が増えた場合、その増加分の多くは水分として考えます。

透析では、ドライウェイトを目標にして余分な水分を抜いていきます。

ここで大切なのは、老廃物を抜くことと除水は同じではないということです。

除水は血圧低下・気分不快・筋けいれんなどと関係しやすい部分で、看護師が特に意識して見る必要があります。

患者さんの中には「透析=水を抜く治療」と理解している方もいます。

実際に「除水するのが透析だと思っていた」と話された患者さんに、透析と除水は別のことを同時に行っていると説明したことがありました。

患者さん自身の理解を確認しながら関わることも、透析看護の一部だと感じています。

3.電解質のバランスを整える

透析では、カリウムやナトリウムなどの電解質のバランスも調整します。

特にカリウムは、異常があると不整脈などに関わるため重要です。

新人のうちはまず、透析は老廃物と水分だけでなく電解質の調整もしていると名前だけ押さえておけば十分です。

カリウム・リン・カルシウム・透析液の組成などはそれぞれ別記事で整理します。

4.酸塩基平衡を整える

腎臓には、体の中の酸とアルカリのバランスを整える働きもあります。

腎臓の働きが低下すると体の中に酸がたまりやすくなり、酸塩基平衡が乱れることがあります。簡単にいうと、体のバランスが酸性側に傾きやすくなるということです。

透析では、透析液に含まれる重炭酸などを介して、この酸性側に傾いた状態を補正します。

新人のうちは、「腎臓が弱ると体に酸がたまりやすくなり、透析でそのバランスも補っている」と押さえておければ十分です。

ダイアライザとは、血液をきれいにするフィルターのこと

透析でよく出てくる言葉にダイアライザがあります。

ダイアライザは、簡単にいうと血液をきれいにするフィルターです。

一般的には「透析器」とも呼ばれています。

血液は体の外に取り出され、回路を通ってダイアライザに送られます。

ダイアライザの中では、血液と透析液が薄い膜をはさんで流れていて、その膜を介して老廃物や電解質などが移動します。

ここで出てくる言葉として、拡散・限外濾過・浸透圧・透析液・半透膜などがあります。

ただし新人のうちはこれらを最初から細かく理解しようとしなくても大丈夫です。

「膜を通して血液の中の不要なものが抜けていく」というイメージで、まず問題ありません。

老廃物を抜くことと、水分を抜くことは違う

新人看護師が最初に混乱しやすいポイントがここです。

透析というと「血液をきれいにする」というイメージが強いため、老廃物を抜くことも水分を抜くことも、まとめて同じように考えてしまいがちです。

しかし現場ではこの2つを分けて考えることが大切です。

  • 老廃物を抜くことは、血液中にたまった不要な物質を取り除くことです。ダイアライザを通して透析液とやりとりすることで行われます。
  • 水分を抜くこと(除水)は、体にたまった余分な水分を取り除くことです。除水量が多いと、体の中の水分移動が追いつかず、血圧低下・気分不快・冷汗・あくび・筋けいれんなどにつながることがあります。

つまり看護師としては、「老廃物を抜いているのか」「水分を抜いているのか」「その結果、患者さんにどんな変化が出ているのか」を分けて見ることが大切です。

看護師は、装置だけでなく患者さんの変化を見ている

透析室では、装置の画面を見る場面が多くあります。

血圧・静脈圧・脱血圧・透析液圧・除水量・除水速度・血流量など、確認する数値はたくさんあります。

もちろん装置の数値やアラームを確認することは大切です。

しかし看護師が見ているのは装置だけではありません。

むしろ大切なのは、患者さんの変化と装置の情報をつなげて考えることです。

たとえば血圧が下がっているときには、数値だけでなく以下のようなことも見ます。

  • 顔色は悪くないか
  • 冷汗はないか
  • あくびが増えていないか
  • 気分不快はないか
  • 返答の様子はいつもと違わないか
  • 足のつりや違和感はないか
  • 除水速度は高すぎないか
  • 体重増加は多くなかったか

同じ血圧の数値でも、患者さんによって意味は違います。

普段から血圧が低めの人と、普段は高めなのに急に下がってきた人では見方が変わります。

「数値が正常か異常か」だけでなく、その患者さんにとってどうなのかを見ることが大切です。

透析中に新人が意識したい観察ポイント

透析中の観察は最初は難しく感じるかもしれませんが、いきなりすべてを完璧に見る必要はありません。

まずは次のような視点で観察すると整理しやすいです。

患者さんの様子

 表情・顔色・会話の反応・訴えを見ます。「いつもより元気がない」「返事が遅い」「あくびが増えた」「足がむずむずすると言っている」といった小さな変化が、血圧低下や筋けいれんの前触れになることもあります。

私は特に、短時間にあくびを何度も繰り返す場合、血圧低下や気分不快の前触れとして注意して観察しています。

バイタルサイン 

血圧や脈拍は透析中の変化を知る大切な情報です。ただし数値だけで判断せず、患者さんの症状や除水状況と合わせて見ます。

除水量と除水速度

除水量が多いと透析中に体への負担が大きくなることがあります。

特に透析後半に血圧低下や筋けいれんが出る場合は、除水との関係を考えることが大切です。

穿刺部と回路 

穿刺部の腫れ・痛み・出血・固定のずれ・回路の屈曲なども確認します。

脱血不良や静脈圧上昇などのアラームが出たときは、装置だけでなく患者さんの腕や回路の状態も合わせて見ます。

新人が最初に覚えておきたい考え方

透析の仕組みを細かく覚える前に、新人看護師がまず持っておきたい考え方があります。

それは、透析は装置だけで完結している治療ではないということです。

装置が血液を回し、ダイアライザで老廃物や水分を調整しています。

しかしその影響を受けるのは患者さんの体です。

だからこそ看護師は、装置の数値を確認しながら患者さんの顔色・訴え・血圧・症状・穿刺部・回路の状態を見ています。

「装置の変化が患者さんの体にどう影響しているのか」「患者さんの変化が装置や除水条件と関係していないか」、この視点を持てると透析中の観察が少しずつつながってきます。

透析の仕組みを理解する目的は、原理を暗記することではなく、患者さんの変化に気づきやすくなることです。

まとめ

透析とは、腎臓の働きが低下した患者さんに対して、血液を体の外に取り出し、ダイアライザを通して老廃物・余分な水分・電解質・酸塩基平衡を調整する治療です。

新人看護師が特に押さえておきたいのは以下の3点です。

  • 透析は腎臓の代わりに、老廃物・水分・電解質・酸塩基平衡を調整している
  • 老廃物を抜くことと、水分を抜くこと(除水)は同じではない
  • 看護師は装置の数字だけでなく、患者さんの変化を見ている

透析室では装置の数値やアラームに目が向きやすくなります。

しかし最終的に大切なのは、その変化が患者さんの体にどう影響しているかを考えることです。

まずは「透析は腎臓の代わりに何をしている治療なのか」という視点で整理しておくと、現場での観察や判断につながりやすくなります。

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