シャントが細い・逃げるときの穿刺戦略|新人透析看護師が意識したい観察・固定・判断のポイント

はじめに

シャント穿刺をしていると、血管が細い・浅い・深い・触れるけれど動きやすい、いわゆる「逃げる血管」に出会うことがあります。

新人の頃は、こうした血管に対して「見えているのに刺すと逃げる」「触れるけれど針先が血管に乗らない」「一度刺したら引くに引けなくなってしまう」「先輩なら入るのに自分だとうまくいかない」と感じやすいと思います。

ただ、細い・逃げるシャントで大切なのは、気合いで刺すことではありません。穿刺前に血管の走行・深さ・動き方・皮膚のたるみ・過去の穿刺部位を確認し、刺す前に成功しやすい条件を整えることです。

日本透析医学会のバスキュラーアクセスガイドラインやKDOQI 2019でも、血管アクセスの管理・モニタリングは血液透析において重要な領域として整理されています。

穿刺はその場で成功すればよいというものではなく、VAを長く守る視点が必要です。1回1回の穿刺の積み重ねが、シャントの寿命に関わってきます。

この記事では、シャントが細い・逃げるときに新人透析看護師が意識したい穿刺戦略を整理します。

参考資料「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」

「細い血管」と「逃げる血管」は少し違う

まず整理したいのは、細い血管と逃げる血管は同じではないということです。

細い血管は、血管径そのものが小さく、針を入れる余裕が少ない状態です。穿刺角度が少し深すぎたり針先の向きがずれたりするだけで、血管を貫いたり血管外へ外れたりしやすくなります。

一方、逃げる血管は、血管自体は触れていても皮下で左右に動きやすい状態です。

皮膚や皮下組織に余裕がある・血管の固定性が弱い・穿刺時に皮膚ごと動く、といったケースがあります。

細い血管では血管の中心を外さないことが重要で、逃げる血管では刺す前に血管を動かない状態にすることが重要です。

ここを混同すると「見えているから刺せるはず」と考えてしまい、血管外穿刺につながりやすくなります。

穿刺前に見るべきポイント

細い・逃げるシャントでは、針を持つ前の観察がかなり重要です。確認したいのは以下の点です。

  • 血管の走行・太さ・深さ・弾力
  • 拍動・スリルの状態
  • 皮膚のたるみ
  • 血管の動きやすさ
  • 前回までの穿刺部位
  • 瘤・硬結・内出血・発赤・疼痛の有無

新人のうちは「どこに刺すか」だけに意識が向きやすいですが、本当に大切なのはその血管がどういう性質なのかを把握することです。

同じように見える血管でも、「見えるけれど浅くて細い」「触れるけれど深い」「太いけれど左右に動く」「硬くて針先が入りにくい」「一部だけ細くなっている感じがある」など、状態はさまざまです。

穿刺困難なときほど、いきなり刺すのではなく、まず指で血管の走行をなぞり、どの方向に針を進めるかをイメージしておくことが大切です。

血管を「点」ではなく「線」で見る

細い・逃げるシャントで失敗しやすい原因の一つは、血管を「ここにある」という点で見てしまうことです。

穿刺では、針先は皮膚を通過したあと血管の走行に沿って進みます。そのため、刺入点だけでなく、針先が進む先の血管の向きまで見ておく必要があります。

たとえば、穿刺部位だけ触ると血管があるように感じても、その先で曲がっていたり急に深くなっていたりすることがあります。

こうした場合、皮膚を刺した直後は逆血があっても、針を少し進めたところで血管外に外れることがあります。

私自身も、太い血管だと思って刺したところ、中枢側に向かうにつれて血管径が細くなっていて針が進まなかったという経験があります。

穿刺部位だけでなく、その先の走行や太さの変化まで確認しておく必要があると実感しました。

細い血管ではわずかな角度のズレが失敗につながり、逃げる血管では針を進める方向と血管の走行が合っていないと血管が横に逃げやすくなります。

穿刺前に「血管はどちらに走っているか」「途中で曲がりや深さの変化はないか」「針をどの方向に寝かせて進めるか」まで確認する習慣をつけましょう。

逃げる血管では固定が最重要

逃げる血管に対しては、針の角度や勢いよりも、血管をしっかり固定できているかが大切です。

血管が逃げる原因は、針先が血管に当たった瞬間に血管が左右や奥に動いてしまうことです。

この状態で無理に針を進めると、血管の横をかすめたり血管外に刺さったりしやすくなります。

固定の方法はさまざまですが、一つの例として、針を持つ手とは反対の手の人差し指で、血管が左右にずれないように横から軽く押さえる方法があります。

血管を上から押しつぶすのではなく、横からそっと壁を作るように添えるイメージです。こうすることで、針先が当たった瞬間に血管が横に逃げにくくなります。

実際の固定方法は血管の位置や患者さんの皮膚状態、穿刺者の手の使い方によっても変わるため、施設の指導者に確認しながら自分に合った方法を身につけていくことが大切です。

ただし、強く引っ張りすぎると血管の位置や走行が変わることがあります。過度な伸展は皮膚が血管を押しつぶしてしまい穿刺しにくくなることもあります。

また患者さんによっては皮膚が薄かったり内出血しやすかったりするため、力加減には注意が必要です。

新人のうちは「刺す手」ばかりに意識が向きますが、細い・逃げる血管では固定する手の使い方が成功率に大きく関わります。

穿刺角度は「深すぎない」が基本

細いシャントでは、穿刺角度が深すぎると血管を貫きやすくなります。

特に浅い血管では、針先が血管に入ったあとも同じ角度で進めてしまうと、血管の後壁に当たり血管外へ抜けるリスクがあります。

そのため、逆血を確認したあとは針を少し寝かせて血管の走行に沿わせる意識が必要です。

ただし、角度だけを暗記してもあまり意味がありません。

血管が浅いのか深いのか、皮膚が薄いのか厚いのか、血管がまっすぐなのか曲がっているのか、これらによって適切な角度は変わります。

「何度で刺すか」よりも「血管の深さと走行に針を合わせる」ことを意識してください。

針を進める前に「針先がどこにあるか」を考える

穿刺中に迷いやすいのが、針を進めるべきか止めるべきかの判断です。

逆血が少しあると「入った」と思って進めたくなります。しかし細い血管では針先だけが血管内に入っていて、外筒や針の角度が安定していないこともあります。

このとき無理に進めると血管を貫いたり血管壁を傷つけたりする可能性があります。

意識したいのは以下の視点です。

  • 今、針先は血管内にあるのか
  • 血管壁に当たっているのか
  • 血管の横にそれていないか
  • 針を寝かせれば進むのか
  • これ以上進めると危ないのか

穿刺は針を入れる作業ではなく、針先の位置を確認しながら進める作業です。

少しでも違和感がある場合は無理に進めず、先輩に確認する判断も必要です。

余談ですが、私自身はまっすぐ刺したつもりでも針先が血管の左側にずれていることがよくありました。

これは私自身の癖の話ですが、右利きで立ち位置や手首の向きが影響しているのかもしれません。

人によってずれる方向は違うと思いますが、うまく入らないときは角度だけでなく左右のずれも疑ってみると、立て直しのヒントになることがあります。

細いシャントでは血流量にも注意する

細い血管や穿刺しにくい血管では、穿刺できたとしても十分な脱血が得られないことがあります。

穿刺後は、針先の位置が安定しているか・腫れや痛みが出ていないかを確認しながら、以下の状態を観察します。

  • 穿刺部の腫脹・痛みの有無
  • 回路内の血液の引け方
  • 脱血・返血の状態
  • 圧の変化や警報の有無
  • 患者さんの訴え

圧の数値だけで判断するのではなく、穿刺部の状態や患者さんの様子と合わせて見ることが大切です。異常を感じたときは早めに先輩へ報告してください。

「刺せたから終わり」ではなく、透析開始後に安定して血流が取れているかを継続して観察する意識を持ちましょう。

無理に刺し続けない判断も大切

細い・逃げるシャントでは「もう少しで入りそう」と思って何度も探りたくなることがあります。

しかし何度も針先を動かすと、血管外穿刺や内出血のリスクが高くなります

患者さんの痛みや不安も強くなります。

以下のような場合は早めに先輩へ相談してください。

  • 血管の走行がはっきりしない
  • 血管が細く、針先の方向に自信がない
  • 刺入後に血管が逃げた感覚がある
  • 逆血が弱い、または不安定
  • 患者さんが強い痛みを訴える
  • 腫れが出てきた
  • 針を進める方向がわからなくなった

穿刺で大切なのは「自分で最後までやり切ること」ではありません。患者さんのシャントを守り、安全に透析を開始することです。

新人がやりがちな失敗

血管を十分に触らずに刺してしまう

見えている血管でも、実際には深さや走行が違うことがあります。

見た目だけで判断せず、必ず触って走行全体を確認します。

固定が弱いまま刺してしまう

逃げる血管では固定が弱いと針先が当たった瞬間に血管が動きます。

横から添えるなど血管が動きにくい状態を作ってから刺すことを意識しましょう。

固定の方法は施設の指導者に確認してください。

角度が深すぎる

細い・浅い血管では、深い角度で刺すと後壁を貫きやすくなります。

逆血後は針を寝かせ、血管の走行に沿わせる意識が必要です。

逆血だけで安心してしまう

逆血があっても、針先が安定して血管内に入っているとは限りません。

その後の針の進み方・抵抗・痛み・腫れを確認します。

迷っているのに針を動かし続ける

迷った状態で針先を探ると血管損傷につながりやすくなります。

判断に迷ったら早めに止まり、先輩に確認します。探りすぎて患者さんに苦痛を与えてしまうこともあります。

実際に現場では患者さんから、針先で探られると痛いといったことも聞いています。

先輩に依頼するときも「何が難しいか」を伝える

穿刺が難しいと感じたとき、ただ「できません」と伝えるよりも、何が難しいのかを具体的に伝えると先輩からの指導を受けやすくなります。

たとえば以下のように伝えます。

  • 「血管は触れますが左右に動きます」
  • 「この部分は細くて針先の方向に自信がありません」
  • 「中枢側に向かうにつれて細くなっている感じがあります」
  • 「走行が途中で曲がっているように感じます」
  • 「まっすぐ刺しているつもりですが左にずれているかもしれません」

先輩も状況を把握しやすくなり、次に自分が穿刺するときの学びにもつながります。成功・失敗だけでなく、自分がどこで迷ったのかを言語化することが成長につながります。

まとめ

シャントが細い・逃げるときの穿刺では、穿刺前の観察と準備が重要です。特に意識したいポイントは以下の通りです。

  • 細い血管と逃げる血管は、難しさの理由が違う
  • 血管は「点」ではなく「線」で見る。走行・太さの変化まで確認する
  • 刺す前に血管の走行・深さ・動きやすさを確認する
  • 逃げる血管では、横から添えて固定する(方法は施設の指導に従う)
  • 細い血管では、深すぎる角度に注意する
  • 逆血だけで安心せず、針先の位置と左右のずれを意識する
  • 穿刺後は穿刺部の状態・回路・患者さんの様子を合わせて観察する
  • 迷ったら無理に続けず、早めに先輩へ相談する

穿刺はその場で成功すればよいというものではありません。患者さんのシャントを守りながら安全に透析を開始し、VAを長く使い続けられるよう意識することが大切です。細い・逃げるシャントほど、焦らず・観察し・固定し・無理をしない判断を積み重ねていきましょう。

この記事は、新人透析看護師向けにシャント穿刺時の観察・判断の考え方を整理したものです。実際の穿刺方法、針の選択、血流量設定、トラブル時の対応は、患者さんの状態や各施設の手順、医師の指示、先輩スタッフの判断に従ってください。

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