シャント穿刺の脱血側・返血側はどう決める?再循環を防ぐための基本と考え方

はじめに

シャント穿刺では、針を血管に入れる技術だけでなく、脱血側Aと返血側Vをどこに置くかも大切です。

配属されて間もない頃や穿刺を始めたばかりの頃は、

「A側とV側って、どっちを吻合部側にするんだっけ?」
「なぜA側を末梢側にする必要があるの?」
「針と針の距離はどれくらい離せばいいの?」

と迷いやすいと思います。

基本としては、脱血側Aは吻合部に近い側、返血側Vはそれより中枢側に設定します。

これは単なる決まりではありません。
大きな目的は、再循環を防ぐことです。

この記事では、新人透析看護師向けに、脱血側・返血側の決め方と、再循環を防ぐために意識したいポイントを整理します。

脱血側Aと返血側Vの基本配置

シャント穿刺では、基本的に次のように考えます。

役割意味基本的な位置
脱血側A血液を体から抜く側吻合部に近い側
返血側Vダイアライザを通った血液を戻す側A側より中枢側・心臓に近い側

ここで押さえておきたいのは、シャント血管の血液は基本的に吻合部側から中枢側へ流れているということです。

その血液の流れに合わせて、A側とV側を配置します。

イメージとしては、次の流れです。

吻合部側 → A側 → V側 → 中枢側

この配置にすることで、V側から戻した血液が、すぐにA側へ吸い込まれることを防ぎやすくなります。

日本臨床工学技士会の「臨床工学技士のためのバスキュラーアクセス日常管理指針」でも、血液の再循環を避けるために、脱血側穿刺部位を返血側穿刺部位より吻合部側に選択し、両者の間をできるだけ離すことが示されています。


なぜA側を吻合部側、V側を中枢側にするのか

この配置でもっとも大切なのは、再循環を防ぐことです。

再循環とは、ダイアライザを通って戻ってきた血液が、体内を十分に巡る前に、もう一度A側から吸い込まれてしまう状態です。

本来であれば、V側から戻った血液は体内へ戻り、全身へ流れていく必要があります。

しかし、A側とV側の位置関係が不適切だったり、針先同士が近すぎたりすると、戻したばかりの血液がすぐA側に引き込まれてしまうことがあります。

これが起こると、透析装置上は血液が回っているように見えても、実際には同じ血液を繰り返し透析しているような状態になります。

その結果、透析効率が低下する原因になります。

道路で考えるとわかりやすい

血液の流れを、一方通行の道路に例えると整理しやすいです。

シャント血管を一方通行の道路だと考えます。
血液は、吻合部側から中枢側へ向かって流れています。

その道路上で、

  • A側は、血液を血管から取り出す「出口」
  • V側は、血液を血管に戻す「入口」

と考えます。

基本は、出口Aを手前に置いて、入口Vをその先に置くイメージです。

そうすれば、V側から戻した血液は、そのまま中枢側へ流れていきます。

逆に、V側を手前、A側をその先にしてしまうと、戻したばかりの血液がすぐA側から吸い込まれやすくなります。

つまり、脱血側と返血側の位置は、ただの「AとVの置き方」ではありません。
血液の流れを邪魔せず、再循環を起こしにくくするための配置として考える必要があります。

針と針の距離も大切

A側とV側の位置関係だけでなく、針と針の距離も重要です。

再循環を防ぐためには、A側とV側をできるだけ離すことが基本です。

ここで大切なのは、皮膚表面の刺入点だけでなく、血管内での針先同士の距離を意識することです。

日本透析医学会の資料では、動脈側穿刺針の針先から5cm以上離れた部位に静脈側穿刺針の針先がくるように穿刺すれば、体外循環した血液の再循環を防ぐことができると説明されています。

そのため、実務上は針先同士が5cm以上離れるように意識すると整理しやすいです。

ただし実際の穿刺では、血管の長さ、太さ、走行、瘤の有無、皮膚状態、過去の穿刺部位などによって、選べる場所が限られることもあります。

新人のうちは、次の3点をまず意識しましょう。

  • A側とV側はできるだけ離す
  • A側は吻合部側、V側は中枢側にする
  • 迷ったら、先輩看護師・臨床工学技士・過去の穿刺記録・エコー所見を確認する

また、針の穿刺向きによっても針先同士の距離は変わります。
施設の方針や患者さんの血管条件に合わせて、針先の位置まで考えることが大切です

吻合部のすぐ近くは避ける

脱血側Aは吻合部側に置くのが基本です。
しかし、だからといって吻合部のすぐ近くを刺せばよいという意味ではありません。

吻合部直近は、血管の状態が不安定だったり、穿刺トラブルが起きたときに再穿刺部位を確保しにくかったりします。

日本透析医学会の資料でも、吻合部に近い部位を穿刺して失敗した場合には再穿刺部位がなくなることがあるため、穿刺は吻合部から5cm程度以上離れた部位で行うのが望ましいとされています。

また、同じ場所への反復穿刺にも注意が必要です。

日本臨床工学技士会の指針では、同一部位の繰り返し穿刺は仮性瘤やシャント狭窄の原因となるため、前回穿刺部位からずらし、できるだけ広い範囲に均等に穿刺することが示されています

実務では、以下の視点が必要です。

  • 吻合部のすぐ近くを避ける
  • 前回穿刺部位から少しずらす
  • 血管の走行に沿って無理のない場所を選ぶ
  • 皮膚トラブルや血腫部位を避ける
  • 次回以降の穿刺部位も残す

穿刺部位は、今日刺せればよいというものではありません。

そのシャントを長く使うために、どの範囲をどう使っていくかという視点が大切です。

AVGの場合の考え方

人工血管、つまりAVGでも、基本的には血液の流れに沿ってA側とV側を決めることが重要です。

一般的には、動脈側吻合部に近い側をA側、静脈側吻合部に近い側をV側として考えます。

ただし、AVGはループ状になっていることもあり、見た目だけでは血流方向がわかりにくい場合があります。

「何となくこっちがA側だと思う」で刺すのは避ける必要があります。

AVGでは、特に以下を確認します。

  • どちらがA側か
  • どちらがV側か
  • 手術記録
  • 施設内の穿刺マップ
  • シャント肢のマーキング
  • 先輩スタッフの情報
  • エコー所見

AVGでは血流量が比較的多く、A・Vを逆に接続しても、一見透析が成立しているように見えることがあります。

しかし、逆接続や不適切な穿刺位置では、再循環が起こりやすくなります。
そのため、穿刺前に血流方向や穿刺マップを確認することが重要です。

また、AVGは人工物であるため、感染や皮膚トラブルにも注意が必要です。
AVF以上に、穿刺部位の選択や皮膚状態の観察を慎重に行う必要があります。

再循環を疑うポイント

脱血側と返血側の配置が不適切だったり、VAに狭窄があったりすると、再循環が起こることがあります。

再循環は、本来できるだけ起こさないように管理するものです。
問題なく透析できている場合は、臨床的に問題となる再循環を認めないことが多いです。

ただし、穿刺位置、回路接続、VA狭窄などによって再循環が起こることがあります。

再循環を疑うきっかけとしては、以下があります。

  • 透析条件に見合わない除去率低下
  • BUN低下率やKt/Vが思ったほど上がらない
  • 静脈圧が上昇している
  • 回路内の血液が異常に濃縮して見える
  • 透析開始直後のA側血液が薄く見える
  • A側・V側の接続や穿刺位置に違和感がある
  • VA狭窄が疑われる所見がある

再循環を疑う臨床所見として、静脈圧の上昇、血液回路内の異常な濃縮、血液回路接続直後の動脈側血液の希釈、透析条件に見合わない除去率低下、尿素窒素・クレアチニンの上昇傾向などを挙げている資料もあります。

また、BVモニターがついている機器では、いつものBV波形と比較して違和感がある場合に、再循環率の確認を検討することがあります。

ただし、BVの下降だけで再循環と判断することはできません。
BV波形は除水量、循環血液量、血圧変動、体調、食事、透析条件などにも影響されます。

そのため、BV波形はあくまで確認のきっかけの一つと考え、以下を合わせて評価します。

  • 穿刺位置
  • 回路接続
  • 脱血状態
  • 静脈圧
  • 回路内の血液の状態
  • 患者さんの症状
  • 検査データ
  • 必要時の再循環率測定
  • エコーなどによるVA評価

新人のうちは、穿刺できたから終わりではなく、透析開始後の観察まで含めて確認することが大切です。

新人が迷いやすいポイント

AとVを逆にしそうになる

穿刺に慣れていないと、吻合部の位置を確認しないまま、刺しやすい場所を優先してしまうことがあります。

しかし、A側とV側は刺しやすさだけで決めるものではありません。

まず確認すべきなのは、以下です。

  • 吻合部はどこか
  • 血液はどちらに流れているか
  • 過去はどこをA側・V側にしていたか
  • 針先同士の距離は確保できるか
  • 皮膚状態や血腫はないか

刺しやすい部位があっても、配置として不適切であれば、再循環につながる可能性があります。

針同士が近くなりすぎる

血管が短い患者さんや、穿刺範囲が限られている患者さんでは、A側とV側が近くなりやすいです。

距離が近いと、返血した血液を脱血側が吸い込みやすくなります。

できれば、針先同士が5cm以上離れることを意識しましょう。

ただし、患者さんによっては理想通りの距離を取れない場合もあります。

その場合は独断で判断せず、先輩看護師や臨床工学技士と相談しながら、過去の穿刺部位やVA評価を確認してください。

いつも同じ場所を刺してしまう

穿刺しやすい場所があると、毎回同じ場所を選びたくなります。

また、患者さんの痛み止めテープやクリームの貼付位置がほぼ毎回同じ場合、穿刺部位が限定されやすいこともあります。

しかし、同じ場所への反復穿刺は、血管壁への負担が集中し、仮性瘤、狭窄、皮膚トラブルにつながる可能性があります。

「今日安全に刺すこと」と「次回以降も安全に刺せる血管を残すこと」の両方を意識してください。

実際に穿刺部位を決めるときの流れ

現場では、以下の順番で確認すると整理しやすいです。

1. 吻合部を確認する

まず、吻合部の位置を確認します。

視診だけでなく、触診でスリルの強さや血管の走行を確認します。


2. 血流方向を確認する

AVFでは基本的に吻合部側から中枢側へ流れます。

ただし、血管の発達、側副血行路、過去の手術歴などによって、見た目だけでは判断しにくいこともあります。

不安がある場合は、過去の穿刺記録、穿刺マップ、エコー所見を確認します。

3. A側を吻合部側に設定する

A側は、V側よりも吻合部側に設定します。

ただし、吻合部直近や皮膚状態の悪い部位は避けます。

4. V側を中枢側に設定する

V側は、A側よりも中枢側に設定します。

このとき、皮膚表面の距離だけでなく、血管内での針先同士の距離も意識します。

5. 開始後の圧と脱血状態を確認する

穿刺後は、透析が開始できたら終わりではありません。

開始後に以下を確認します。

  • 脱血は安定しているか
  • 返血圧は高くないか
  • 穿刺部の腫脹はないか
  • 回路内の血液の状態はおかしくないか
  • 患者さんの痛みや違和感はないか
  • 検査データ上、透析効率は保たれているか

ここまで見て、初めて穿刺後の観察ができていると考えましょう。

まとめ

シャント穿刺の脱血側Aと返血側Vは、血液の流れに沿って決めます。

  • 脱血側Aは、返血側Vより吻合部側にする
  • 返血側Vは、A側より中枢側にする
  • 目的は再循環を防ぐこと
  • A側とV側はできるだけ離す
  • 皮膚表面の距離だけでなく、針先同士の距離を意識する
  • 針先同士は5cm以上離すことを目安に考える
  • 吻合部直近や同一部位の反復穿刺は避ける
  • AVGでは血流方向や穿刺マップを必ず確認する
  • 開始後は圧、脱血状態、回路内の状態、患者さんの症状、検査データも見る

シャント穿刺は、針を血管に入れる技術だけではありません。

どこから血液を抜き、どこへ戻すかを考えることも、透析看護の大事な技術です。

新人のうちは迷う場面も多いですが、血液の流れと再循環の考え方を理解しておくと、穿刺部位を選ぶ理由が見えやすくなります。

「Aはどっちだったかな?」と暗記で考えるのではなく、
戻した血液をすぐ吸い込まない配置になっているかという視点で考えてみてください。

注意書き

本記事は、新人透析看護師向けの学習・振り返りを目的とした内容です。
実際の穿刺部位や対応は、患者さんのVA状態、施設基準、医師・臨床工学技士・先輩看護師の判断に従ってください。

参考資料

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