はじめに
シャント穿刺をして透析を始めたあと、思ったように血液流量が取れず、脱血不良に困ることがあります。
新人のうちは「針が入っていないのか」「血管が悪いのか」「刺し直したほうがいいのか」と頭が真っ白になることもあると思います。私自身もそうでした。
脱血不良が起きたときに大切なのは、「どこに問題がありそうか」を落ち着いて整理することです。
穿刺の角度や針先の位置だけでなく、回路の屈曲、患者さんの体位、シャントそのものの狭窄など、複数の原因が絡んでいることもあります。
この記事では、脱血不良が起こる主な原因と現場で確認したいポイント、対応の考え方を新人看護師向けに整理します。
脱血不良とは
脱血側から十分に血液が引けず、予定した血液流量が出ない状態のことです。
現場では以下のような形で気づくことが多いと思います。
- 血液流量を上げようとすると脱血圧アラームが鳴る
- 設定した血液流量まで上げられない
- 回路内に血液がうまく流れない
- 吸い付くような感じで流れが不安定になる
- ピローや回路が陰圧でつぶれて見える
- エアが混入して気泡センサーが発動する
まず知っておきたいこと:原因を3つに分けて考える
脱血不良の原因は、大きく3つに分けると整理しやすくなります。
- 針や穿刺に関係する原因
- 回路・体位など外から調整できる原因
- シャントそのものに問題がある原因
この3つで考えると、「今その場で対処できること」と「報告や精査が必要なこと」を分けやすくなります。
焦って針を動かす前に、まずどのカテゴリの問題かを考える習慣をつけると、対応が落ち着いてきます。
脱血不良の主な原因
1.針先が血管内にうまく入っていない
もっともよくある原因のひとつです。穿刺できているように見えても、針先が血管壁に当たっていたり、浅すぎたり、十分に内腔まで入っていなかったりすると、うまく脱血できません。
具体的には以下のような状況で起こりやすいです。
- 針先が血管壁に当たっている
- 血管の一部だけにかかっている
- 浅く入りすぎている、または深く入りすぎて後壁に近い
- 固定後に針先の位置が少しずれた
- 狭窄部位に留置されている
- 針が血管内腔に十分達しておらず、実際には血管内に入っていない
最後の「針が血管内腔に十分達しておらず、実際には血管内に入っていない」状態は、私自身もよく経験しました。俗にいう皮がいちまい切れていない状態です
血液の返りはあるのに脱血できない、というときはこれを疑うことがあります。
2.血管壁への吸い付き
血液ポンプを回したときに、針先が血管壁に吸い付くような状態になることがあります。
少し流れては止まり、また流れる、という不安定な脱血不良になりやすいのが特徴です。
細い血管・血管が浅い部位・角度がきつい穿刺・体位変換後などで起こりやすい印象があります。
3.血管外穿刺
すでに血管外に漏れている場合も、十分な脱血はできません。
痛み・腫れ・違和感があるときは、単なる脱血不良ではなく血管外穿刺をまず疑う視点が必要です。
4.回路やルートの屈曲・クランプ・接続不良
針やシャントばかり見てしまいがちですが、意外と見落としやすい原因の一つです。
以下の場合などで起こりやすいです。
- 回路が折れている・ねじれている
- テープ固定で引っ張られている
- クランプの開放が不十分
- 接続部に問題がある
- 回路が脱血側の血管を圧迫するように固定されている
体動がある患者さんでは、回路の絡まりにも注意が必要です。
穿刺後の固定の際に、シャント吻合部側が回路で圧迫されて一時的に脱血が悪くなる、というこということも経験しました。
5.患者さんの体位や腕の位置
腕が強く曲がっていたり、肩や肘の位置でシャントが圧迫されたりすると、脱血しにくくなることがあります。
穿刺や刺し直しを考える前に、まず腕の位置を整えるだけで改善することもあります。
覚えておくと、焦らずに対応しやすくなります。
6.針の太さと血液流量設定があっていない
血液流量に対して針が細い場合、必要な流量を取ろうとして強い陰圧がかかり、脱血不良のように見えることがあります。
目安として、前ポンプの動脈圧が−200mmHgより強く陰圧になる場合は、流量や針の条件を見直す必要があります。
針が細ければ引ける量も制限されるため、設定血液流量通りの血液量が実際には取れていないこともあります。
7.シャント血管の狭窄
その場の穿刺の問題ではなく、シャントそのものの流れが悪くなっているケースです。
狭窄があるとアクセス流量が低下し、脱血しにくくなったり透析効率が落ちたりします。
進行すると血栓閉塞につながることもあります。
狭窄を疑う場面としては、以下のようなサインが参考になります。
- 最近ずっと脱血不良が続いている
- 以前より血液流量が取りにくい
- 穿刺しにくくなった
- スリルや雑音の触れ方・聞こえ方が変わった
- 止血時間が長くなった
- 静脈圧の上昇や再循環が気になる
- 透析中に血管がへこむ
狭窄の部位によって、陰圧の強さや静脈圧上昇など現れ方が異なることもあります。
脱血不良が起きたときの確認ポイント
いきなり「刺し直し」と考えるより、順番に確認するほうが安全です。
まず確認したいこと
- 患者さんに痛み・しびれ・違和感がないか
- 穿刺部に腫脹がないか
- 回路の屈曲やクランプ忘れがないか
- 腕や体位に無理がないか
- 針の固定で無理に引っ張られていないか
- いつから起きているか(穿刺直後か、開始後しばらくしてからか)
- 今回だけなのか、最近続いているのか
この確認をひと通りすることで、一時的なトラブルなのかアクセス自体の問題なのかが見えやすくなります。
脱血不良が起きたときの対応
1.まず回路と腕の位置を確認する
最初にやることはシンプルです。回路の折れ・ねじれを直す、クランプを確認する、腕の位置を整える、肘の曲がりや圧迫がないか見る。
これだけで改善するなら、原因は穿刺そのものではない可能性があります。
2.血液流量をいったん下げて様子を見る
無理に高い流量で引こうとすると、吸い付きや陰圧悪化をさらに起こしやすくなります。
穿刺時の血管の攣縮で内腔が狭窄し、脱血が取れなくなることも時々ありました。
このような場合はいったん血液流量を下げて、脱血の安定性を確認します。
3.針先の位置を慎重に見直す
明らかな腫脹や痛みがない場合は、針先が血管壁に当たっているだけのこともあります。
施設のルールがあればそれに沿って、針先を調整することで改善することがあります。
ただし、やみくもに動かしすぎると血管外穿刺や血管損傷につながることもあるため、自信が持てないときは早めに先輩へ相談してください。
4.血管外穿刺が疑わしいなら無理をしない
痛み・腫脹・抵抗感があるなら、脱血不良として粘り続けないことが鉄則です。
そのまま続けると腫脹が進み、次の穿刺も難しくなることがあります。
5.繰り返す場合はアクセス異常を疑って報告する
毎回のように脱血不良が起きる、最近悪化している、穿刺しにくくなっている場合は、狭窄などアクセスの問題を考えるべきです。
狭窄が影響していると考えられる場合、私の経験では止血バンドで中枢側を軽く駆血し、末梢からの血流を針先に集めるようにして脱血を確保する対応をとることがあります。ただしこれはあくまで一時的な対処であり、判断は施設のルールや医師の指示に従ってください。
継続する低血流量は透析効率の低下や血栓リスクにつながるため、観察所見をまとめて報告し、必要に応じてエコーなどの評価につなげる視点を持っておきましょう。
新人看護師が迷いやすいポイント
新人のうちは、脱血不良が起きると「自分の穿刺が全部悪かった」と思いがちです。
でも実際には、針先の位置・血管の状態・回路の問題・体位・その日のシャントの流れ、これらが重なって起きることもあります。
焦って何度も針を触って位置調整などすることより、原因がなにかを考えることのほうが、患者さんへの負担も少なく、結果的に早く解決につながります。
脱血不良予防のために意識したいこと
穿刺前
- 走行・深さ・太さをよく確認する
- どこなら十分な血流が取れそうかイメージする
- スリルや見た目がいつもと違わないか確認する
穿刺時
- 無理な角度や姿勢で刺さない
- 血液の返りだけで安心しすぎない
- 固定後に位置がずれていないか意識する
- 確実に血管内腔にカテーテルが留置されているか
透析開始後
- 血液流量を上げたときの反応を見る
- 脱血圧・静脈圧の変化を普段から意識する
- 「今日は何か違う」を見逃さない
- 患者の腕の位置
- 回路の位置
- 固定方法
- 血管のへこみ
- 留置針の位置
まとめ
脱血不良が起こる原因としては、針先の位置不良・血管壁への吸い付き・血管外穿刺・回路の屈曲や接続不良・体位や腕の位置・針と血液流量不一致・シャント狭窄などが考えられます。
起きたときはまず、回路・体位・痛みや腫脹の有無を確認する。そのうえで穿刺の問題なのか、アクセス自体の問題なのかを考える、という順番を意識してください。
「今回だけのトラブルか、最近続いている変化か」まで見られるようになると、脱血不良への対応はかなり安定してきます。









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